部活を引退し、高校卒業を控える南中カルテット。カフェで繰り広げる4人の恋愛トークからそれぞれの恋愛観をまとめました。
タイトル | 飛び立つ君の背を見上げる |
巻数 | 13巻目 |
発売日 | 2021年2月27日 |
作者 | 武田綾乃 |
出版社・レーベル | 宝島社・宝島社文庫 |
収録内容
- プロローグ
- 第一話 傘木希美はツキがない。
- 第二話 鎧塚みぞれは視野が狭い。
- 第三話 吉川優子は天邪鬼。
- エピローグ
- 記憶のイルミネーション
鎧塚みぞれ
みぞれの音大合格祝いでカフェに集まった南中カルテット。4人の恋愛トークは優子のこの発言から始まる。
大学行ってみぞれに彼氏ができたらどうしよう
(ごほっ)
オレンジをかじっていた希美がむせた。
希美も過去に同じ妄想をしたことがあったのか、動揺を隠せない。希美が咳き込んでるのは自分が原因だと知ってか知らずか健気に心配するみぞれ。
大丈夫?
そらい急やな
そう? みぞれってばモテそうやん
みぞれに庇護欲をかき立てられている優子は、異性からも同じように守ってあげたいと思わせるだろうと考える。
みんなは恋人、欲しいの?
赤ちゃんはどうやってできるの? みたいな、暴力的な無垢が詰まった問いかけだった。
うーん
夏紀がどう答えていいか悩んでると、希美がみぞれに聞き返した。
逆にみぞれは欲しくないの?
想像ができない
あー
みぞれに彼氏ができたら寝込むかも
恋人がいる状況をイメージできないみぞれ。周囲も同じようでそれに納得する。みぞれに彼氏ができることをなんとなく望んでいない優子たちだった。
突然の優子の恋愛話に動揺した希美に、心のなかで理解を示す夏紀。
自分と同い年の女子高生であるとはわかっているものの、みぞれの存在はどこか聖域めいている。俗物的なものに触れてほしくないというか、ずっと清らかでいてほしいと思ってしまうというか。
傘木希美
優子がみぞれをモテそうと思ってるのと同じように、夏紀は希美のことをモテて当然と思っている。
人当たりの良い陽気な性格で見た目もスタイルも良い希美が高校生のうちに彼氏を作らなかったことを不思議がる。
希美こそ、さっさと彼氏作りそう。っていうか、高校で作らんかったんが信じられん
だって、それどころじゃなかったし
あー、まあね
一年生のときは先輩部員との騒動に奔走され、二年生で部活に復帰。三年ではコンクールに向けて、みぞれとのソの掛け合いを成功させるためひたすら練習に励んだ希美。
波乱もありつつ忙しい部活生活を送っていた希美は、恋愛に時間を割くことができなかったようだ。
中川夏紀
高校で希美に恋人がいなかったのを訝しんだ夏紀。希美に夏紀も同じだと返される。
夏紀だってそうやんか
それこそ同じ理由やな。部活忙しくてそれどころじゃなかった
楽そうという当初の入部理由とはかけ離れた三年間になった夏紀の部活生活。忙しくも充実した日々を送った夏紀もまた、恋愛について考える暇がなかった。
ただ、夏紀はもし彼氏がいたらどうしていたかをこう妄想している。
もしも夏紀に好きな男がいたなら、多忙な部活動の合間を縫ったって、一秒でもいいから会いたいと思ったかもしれない
夏紀はふと高校生活を振り返った。つまらない学校行事や記憶に残らないクラスメイトたちのことはどうでもいいと過去に固執はしない。夏紀は自分の興味あることに没頭したいという想いを抱いている。
面倒なことはさっさと忘れて、楽しかったことだけを覚えていたい。好きなもの、好きな人、それだけに脳のリソースを割きたい
吉川優子
みぞれの話題を振った優子だったが、夏紀のちゃちゃが入り、いつも通りの言い合い発展する。
そう? みぞれってばモテそうやん
優子と違って?
はぁ?うちはモテますけど?
確かにアンタは黙ってたら可愛いからなぁ
黙ってたらって何よ。二十四時間可愛いでしょうが
モテるのは事実のようで優子は何度も告白され、それを全て断ってきた。同級生との恋愛よりも全国大会を目指して部活を率いてきた経験のほうがよっぽど有意義だと言い切る。
ってか、部活がすごすぎて男といても刺激が足りひん
付き合ったことないくせになんか言うてはりますわ
付き合おうと思ったらいつでも付き合えるし!
優子は男子にそこそこ人気があった。何度か告白されていることも、そのたびにすっぱり振っていることも夏紀は知っている。
夏紀は告白を受けなかったのはもったいないと優子に言った。しかし、優子は人間関係に対する冷淡さのある考えに口にする。
ぶっちゃけさ、お試しでもいいから付き合ってみたらよかったのに
べつに、一緒にいたいと思わない人に時間を割きたくないだけ
うわ
うわ
優子は二人にドン引きされた。