タイトル | 安達としまむら |
発売日 | 2013年3月10日 |
作者 | 入間人間 |
出版社・レーベル | 電撃文庫 |
収録内容
- 制服ピンポン
- 未来フィッシング
- 安達クエスチョン
- 二等辺トライアングル
- 女子高生ホリディ
第7位
あとはただよい未来を願って、
なかなか釣れないもんね
まずそう思うことが大事なのです
はぁ?
なかなか釣れない、うまくいかない。それはすなわち、なにかを始めているということ
あとはただよい未来を願って、釣り糸を垂らすだけです
未来フィッシング
第6位
し、しまむらのこと、
「なに?」
え?『好き! っていうか』 えぇ? あら? あらら? 私は、なにを言おうとしたんだ?
いや言った? 言ってない? 言ったら、伝わっていたらどうなる? どうなる?
「ん?」
『し、しまむらのこと、好きみたいな』
『す、好きなのかな。多分さ、ひょっとしたらのっ話。す、好き? のようなさ』
「えぇと、大丈夫? 呼吸してる? 顔、真っ赤だけど」
安達クエスチョン
第5位
でもそうして隠れた先で、
人と出会って、話して、自分なりにめいっぱい気を遣って。 こういうのも傷ついたって言っていいのかな?
いやちょっと違うかも、摩耗。わたしが少しだけ削れて消えたって方が正しいかな。
お互いの傷を避けて、無理に触れあわないように変な姿勢で風に吹かれて。
疲れないはずがない。やめようか隠れようか、逃げようかと時々思ってしまう。
でもそうして隠れた先で、わたしは安達と出会った。それはいいことだろうと、肯定できる。
二等辺トライアングル
第4位
ようするに、好きなんだろうなぁと思った。
しまむらと特別でありたい。 変な意味はない、本当にない。
しかし特別であるのなら、変でも構わない。
ようするに、好きなんだろうなぁと思った。
女子高生ホリディ
第3位
安達と出会ったことが、
だから人といることはほんの少し、苦痛を伴う。 理解できないこと、面倒なこと、関係のこじれに伴う修復、解体への労力。
だけどそうした負の面の隙間に、幸せは転がって幸せは転がっている。 子供のときになくした小さなボールを、ふと見つけるように。
安達と出会ったことが、よりよい未来そのものであると信じたい。
未来フィッシング
第2位
うまくいかなくて、たくさん傷つけても、
一人は退屈だ。それは孤独よりずっと辛い、耐えがたい病気だ。
わたしを変成していく悪性の病気に対抗する薬は、人との間に生まれる見えないものしかないんだろう。
だから、わたしはこれからも摩耗していく。 自分を保つために、少しずつ失っていくのだ。
さっきの漫画の台詞を、舌の上で舐めるように呟く。
『うまくいかなくて、たくさん傷つけても、うらまないで』
二等辺トライアングル
第1位
なんだばしゃぁぁぁぁ、
「うぅうううう、うううぅうううう」
枕に突っ伏したまま唸り声をあげてしまう。なにしてんの私。ナニシテンノー。
あぅうううあと情けない悲鳴のようなものを漏らしながら、制服の上着を脱ぐ。それからまた、うううあああの繰り返し。
「なんだばしゃぁぁぁぁ、なんだばしゃーあああああ」
感情由来の新しい日本語は、自分でもなにを言っているのかさっぱり分からなかった。
安達クエスチョン