タイトル安達としまむら
発売日2013年3月10日
作者入間人間
出版社レーベル電撃文庫

収録内容

  • 制服ピンポン
  • 未来フィッシング
  • 安達クエスチョン
  • 二等辺トライアングル
  • 女子高生ホリディ

第7位

あとはただよい未来を願って、
島村抱月

なかなか釣れないもんね

知我麻社

まずそう思うことが大事なのです

島村抱月

はぁ?

知我麻社

なかなか釣れない、うまくいかない。それはすなわち、なにかを始めているということ

知我麻社

あとはただよい未来を願って、釣り糸を垂らすだけです

第6位

し、しまむらのこと、
島村抱月

「なに?」

安達桜

え?『好き! っていうか』 えぇ? あら? あらら? 私は、なにを言おうとしたんだ?

安達桜

いや言った? 言ってない? 言ったら、伝わっていたらどうなる? どうなる?

島村抱月

「ん?」

安達桜

『し、しまむらのこと、好きみたいな』

安達桜

『す、好きなのかな。多分さ、ひょっとしたらのっ話。す、好き? のようなさ』

島村抱月

「えぇと、大丈夫? 呼吸してる? 顔、真っ赤だけど」

第5位

でもそうして隠れた先で、
島村抱月

人と出会って、話して、自分なりにめいっぱい気を遣って。 こういうのも傷ついたって言っていいのかな?

島村抱月

いやちょっと違うかも、摩耗。わたしが少しだけ削れて消えたって方が正しいかな。

島村抱月

お互いの傷を避けて、無理に触れあわないように変な姿勢で風に吹かれて。 

島村抱月

疲れないはずがない。やめようか隠れようか、逃げようかと時々思ってしまう。

島村抱月

でもそうして隠れた先で、わたしは安達と出会った。それはいいことだろうと、肯定できる。

第4位

ようするに、好きなんだろうなぁと思った。
安達桜

しまむらと特別でありたい。 変な意味はない、本当にない。

安達桜

しかし特別であるのなら、変でも構わない。

安達桜

ようするに、好きなんだろうなぁと思った。

第3位

安達と出会ったことが、
島村抱月

だから人といることはほんの少し、苦痛を伴う。 理解できないこと、面倒なこと、関係のこじれに伴う修復、解体への労力。 

島村抱月

だけどそうした負の面の隙間に、幸せは転がって幸せは転がっている。 子供のときになくした小さなボールを、ふと見つけるように。

島村抱月

安達と出会ったことが、よりよい未来そのものであると信じたい。

第2位

うまくいかなくて、たくさん傷つけても、
島村抱月

一人は退屈だ。それは孤独よりずっと辛い、耐えがたい病気だ。

島村抱月

わたしを変成していく悪性の病気に対抗する薬は、人との間に生まれる見えないものしかないんだろう。

島村抱月

だから、わたしはこれからも摩耗していく。 自分を保つために、少しずつ失っていくのだ。 

島村抱月

さっきの漫画の台詞を、舌の上で舐めるように呟く。

島村抱月

『うまくいかなくて、たくさん傷つけても、うらまないで』

第1位

なんだばしゃぁぁぁぁ、
安達桜

「うぅうううう、うううぅうううう」

安達桜

枕に突っ伏したまま唸り声をあげてしまう。なにしてんの私。ナニシテンノー。

安達桜

あぅうううあと情けない悲鳴のようなものを漏らしながら、制服の上着を脱ぐ。それからまた、うううあああの繰り返し。

安達桜

「なんだばしゃぁぁぁぁ、なんだばしゃーあああああ」 

安達桜

感情由来の新しい日本語は、自分でもなにを言っているのかさっぱり分からなかった。