北宇治高校吹奏楽部のホントの話
発売日 | 2018年4月5日 |
作者 | 武田綾乃 |
出版社・レーベル | 宝島社・宝島社文庫 |

-8-210x300.jpg)
収録内容
- 一 飛び立つ君の背を見上げる(Fine)
- 二 勉学は学生の義務ですから
- 三 だけど、あのとき
- 四 そして、そのとき
- 五 上質な休日の過ごし方
- 六 友達の友達は他人
- 七 未来を見つめて
- 八 郷愁の夢
- 九 ツインテール推進計画
- 十 真昼のイルミネーション
- 十一 木綿のハンカチ
- 十二 アンサンブルコンテスト
- 十三 飛び立つ君の背を見上げる(D.C.)
六 友達の友達は他人
自分がいいなって思うことはちゃんといいって言いたいの

全国出場とか、金賞獲得とか、上手いねって言われる学校のバロメーターは確かにあるけど、でも音楽ってそれだけとちゃうやんか。

聞く人の好みもあるし、音楽は生き物やからステージによっても変わったりするし。やからね、緑はあんまり軽々しくどっちが上とか言えへんかな

でもでも、北宇治と立華が両方ともトップクラスで上手いってのは間違いないかな。どっちもめちゃくちゃ上手い!

謙遜とかしいひんねんな

んふふ、ほんまのこと言うただけやから。

緑、自分がいいなって思うことはちゃんといいって言いたいの。好きとか最高とか、ちゃんと伝えへんとやる気って死んじゃうから
北宇治高校吹奏楽部、決意の最終楽章 後編
発売日 | 2019年7月6日 |
作者 | 武田綾乃 |
出版社・レーベル | 宝島社・宝島社文庫 |

-10-210x300.jpg)
収録内容
- プロローグ
- 一 駆け出すオブリガード
- 二 悩めるオスティナート
- 三 つながるメロディ
- エピローグ
一 駆け出すオブリガード
未来の楽しみをいっぱいいろんなとこに埋めてるんやろうなって

だってさ、新生活にはいまみたいな部活ってないわけやん。いまってさ、ほぼ毎日みんなで集まって楽器吹いて、めっちゃ練習してるわけやん。

それが全部なくなったらどうなるんやって思わへん?

コンクールが終わって、部活が終わって、そしたらうちの人生にいま以上にすごいことって起こるんやろうかって心配になる

なんでそんなふうに思うん? 緑、大人になるのが楽しみやけど

緑はいつも前向きやなぁ

緑、こう思うねん。いまの緑たちの毎日は種まきみたいなもので、未来の楽しみをいっぱいいろんなとこに埋めてるんやろうなって

たとえばね、大人になった葉月ちゃんがテレビを見てたら吹いたことのある曲が流れたり、お出かけ中に街なかで演奏してる子供を見かけたりするわけやん。

そしたら、懐かしいなーっていまの時間を思い出すやろ?

緑たちが一緒に過ごしてきた時間は大人になっても生活のいろんなところに眠ってて、生きてるだけどんどん掘り起こされていくねん。

それってなんか、お宝を埋めてるみたいで素敵やなぁって思わん?

……思う

さすが緑ちゃん

そうだね
三 つながるメロディ
ボーイズ・ビー・アンビシャス!

なんで泣いてるん? 悲しいことなんて、一個もないのに

すみません。緑先輩が卒業するところを想像して。

来年、先輩はもうここにいないのかと思ったら、涙が

求くんは泣き虫さんやね。しょうがないなぁ
コントラバスが歌い上げたその曲は、エドワード・エルガーの『愛の挨拶』。
緑輝がかつて、求に弾いて聞かせた曲だった。
求はぐしぐしと袖口で顔を拭うと、目元を腫らしたまま弓を握った。
緑輝の生み出す旋律に、求の音が重なり合う。

時間が進まないでって思うの、久しぶりです