小説『響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章 後編』から名シーンを3つ紹介します。スピンオフ映画『リズと青い鳥』の原作となったシリーズ9作目。

タイトル北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章 後編
巻数9巻目
発売日2017年10月5日
作者武田綾乃
出版社レーベル宝島社・宝島社文庫

収録内容

  • プロローグ
  • 一 憧憬にアウフタクト
  • 二 独白とタチェット
  • 三 彼女のソノリテ
  • 四 未来へのフェルマータ
  • エピローグ

三 彼女のソノリテ

みぞれ先輩、希美先輩と相性悪くないですか?

合宿一日目の夜中。寝付けずにいた久美子は麗奈と部屋を抜け出す。休憩所へ向かった二人は、そこのベンチでレトロゲームをしていたみぞれと出会う。

みぞれは去年と同じように久美子が来ることを予想していた。久美子を真ん中にして横並びに座った三人。麗奈はみぞれに希美の話題をぶつける。

高坂 麗奈

前々から感じていたんですが、みぞれ先輩、希美先輩と相性悪くないですか?

高坂 麗奈

自由曲のソロ、ずっと合わないままですよね。あれって、みぞれ先輩と希美先輩の息が合わないのが原因なんじゃないですか

鎧塚 みぞれ

そんなことない

高坂 麗奈

本当ですか? アタシ、ずっと思ってたんです。みぞれ先輩は希美先輩を信用してない。希美先輩が自分に合わせてくれると思っていないから、だから自分を出さない演奏になる

麗奈は自由曲「リズと青い鳥」の第三楽章『愛ゆえの決断』のオーボエとフルートの掛け合いが上手くかみ合わず、合奏練習で課題となっている件が気がかりでいた。

その解決の一助になればと考え、希美との関係性について話を振る麗奈であったが、直球すぎる発言で久美子を慌てさせた。

武田綾乃. 響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章 後編 (宝島社文庫) (p.147). 宝島社. Kindle 版.

ずるいよね、みぞれは。ほんとずるい

みぞれの本気の演奏を聴いて涙を浮かべた希美は、休憩を告げられてホールを抜け出す。夏紀は久美子に探すように依頼する。

久美子は合宿所の裏口に繋がる階段で扉にもたれかかって座る希美を見つける。希美は久美子に胸に秘めていたみぞれに対する本心を打ち明ける。

傘木 希美

うちはさ、そういう理由で泣いたんちゃうねん。 ショックやった。

傘木 希美

こんなに差があったんかーって、まざまざと見せつけられた感じ。みぞれ、いままで手加減してたんやろうね。うちのレベルに合わせてたから、これまで全力が出せんかった。

黄前 久美子

そ、そういうわけじゃないと思いますけど

傘木 希美

でも、実力に差があったのは事実やろ? うち、なんかほんまアホみたいやな。ソロ頑張ってって何度もみぞれに言ってたのに。みぞれが本気を出せんかったんは、当のうちの実力が足りてなかったからやなんてさぁ

みぞれが備えている本来の演奏技術を発揮できていなかったのは、希美の実力に合わせていたからだと知り、落ち込んでしまう希美。

希美が音大を目指すとみぞれに嘘をついた訳が明かされるシーン。関西大会ではみぞれの足を引っ張らない演奏にすることを決意する。

武田綾乃. 響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章 後編 (宝島社文庫) (p.204). 宝島社. Kindle 版.

私は、希美が幸せならそれでいい

関西大会二日前、北宇治高校吹奏楽部は太陽公園近くのホールを貸し切って合奏練習をしていた。楽器の撤収作業を終え、ほとんどの部員たちはすでに施設を出ていた。

滝先生にソロの相談をしてた希美とみぞれ。みぞれは施設の入り口の自動扉の手前で、先に建物を一歩外に出た希美に声をかけ、進路について直接確かめる。

鎧塚 みぞれ

希美は、音大に行くつもりはないの?

傘木 希美

えっ

鎧塚 みぞれ

希美は、いつも勝手。一昨年だって、勝手に辞めた。私に黙って、勝手に

傘木 希美

なんでいきなりそんな昔のこと言うん?

鎧塚 みぞれ

私は、ずっと希美を追いかけてきた。希美に見放されたくなくて、それで、楽器だって続けてた。私にとって、ずっと、いちばんは希美だった。希美と一緒にいたかったから! だから、オーボエも頑張った!

傘木 希美

そんな大げさな言い方はやめてや。みぞれは、うちより才能あるやんか。それやのに、そんなこと言うん?うちのために楽器をやってたとか、そんなしょうもない言葉で自分のこれまでの努力を片づけるん?

鎧塚 みぞれ

……ごめんなさい、本当はこんなこと言うつもりじゃなかった。私、希美に感謝してる。ただ、それを言いたかっただけ

傘木 希美

感謝されるようなことしてないよ。むしろみぞれは怒っていい。音大を受けるって言い出したのは私なのに

鎧塚 みぞれ

怒れない。だって、希美の選択だから。私は、希美が幸せならそれでいい

希美が一言も告げずに部活を辞めたこと、聞いていた音大への進学はしないことのどちらも希美の決めたことだからそれを尊重しているとみぞれは伝えた。

花壇に隠れて、会話を盗み聞きしていた夏紀と久美子の二人と、遅れて施設から出てきた優子に見られながら、みぞれと希美は中学生の頃は出来なかった大好きのハグし、お互いの好きなところを言い合う。

武田綾乃. 響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章 後編 (宝島社文庫) (p.254). 宝島社. Kindle 版.

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