小説『響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部のホントの話』から名シーンを3つ紹介します。シリーズ10作目となる短編集。

タイトル北宇治高校吹奏楽部のホントの話
巻数10巻目
発売日2018年4月5日
作者武田綾乃
出版社レーベル宝島社・宝島社文庫

収録内容

  • 一  飛び立つ君の背を見上げる(Fine)
  • 二 勉学は学生の義務ですから
  • 三 だけど、あのとき
  • 四 そして、そのとき
  • 五 上質な休日の過ごし方
  • 六 友達の友達は他人
  • 七 未来を見つめて
  • 八 郷愁の夢
  • 九 ツインテール推進計画
  • 十 真昼のイルミネーション
  • 十一 木綿のハンカチ
  • 十二 アンサンブルコンテスト
  • 十三 飛び立つ君の背を見上げる(D.C.)

十一 木綿のハンカチ

将来を誓い合うには充分だった。

京都駅の構内にあるコーヒーショップで卓也が乗る新幹線を待っている卓也と梨子。卓也は東京専門学校で二年間、管楽器のリペア師になる勉強をするため京都を離れる。

梨子は告白された日のことを思い出し、涙を浮かべてしまう。卓也はそんな梨子に青と黒の幾何学模様のハンカチを渡した。

後藤卓也

俺、梨子以外の人とか考えられんから

長瀬梨子

うん

後藤卓也

待っててほしい

長瀬梨子

待てなくなったら、うちから会いに行くから

後藤卓也

ありがとう

店内に置かれた時計が、タイムリミットが迫っていることを示している。恋人たちに残された時間は、未練を殺すには短すぎたが、将来を誓い合うには充分だった

武田綾乃. 響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部のホントの話 (宝島社文庫) . 宝島社. Kindle 版.

十二 アンサンブルコンテスト

……でも、順菜ちゃんみたいに、自分もAで出たいって思ってええんかな

アンサンブルコンサート出場を懸けた校内予選の前日。音楽室から体育館へ楽器を運ぶ部員たち。久美子とつばめの二人は廊下を車輪のついたマリンバを移動させていた。

釜屋つばめは、同じパーカッションパートで同級生の井上順菜より演奏技術がないことに引け目を感じていた。つばめはコンクールへA編成で出場経験のある久美子に、そんな自分でもAを目指してもいいのか意見を求める。

釜屋つばめ

黄前さんはさ、一年生からずっとAやねんな?

黄前久美子

まあ、うん。そうだね。来年どうなるかはわかんないけど

釜屋つばめ

Aの本番ってさ、やっぱり怖いん?

黄前久美子

怖いって言うか……まあ、緊張はする

釜屋つばめ

そっかぁ。私、下手やし。いままでずっと自分がBなんは当たり前やと思ってたんやけど、でも……でも、順菜ちゃんみたいに、自分もAで出たいって思ってええんかな

黄前久美子

ダメって言う人なんていないよ

釜屋つばめ

そうかな

黄前久美子

そうだよ

武田綾乃. 響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部のホントの話 (宝島社文庫) . 宝島社. Kindle 版.

久美子の肯定的な言葉を受け、マリンバを引く手と足に力がこもったつばめ。映画『特別編 響け!ユーフォニアム~アンサンブルコンテスト~』でも描かれているシーン。TVアニメ『響け!ユーフォニアム3』では、妹の釜屋すずめが楽器初心者ながら姉と同じ北宇治高校吹奏楽部に入部する。担当楽器はチューバ。

十三 飛び立つ君の背を見上げる(D.C.)

優子、いままでありがとう

卒業式の朝、学校へ向かう優子は肩を叩かれて振り向くと、顔を赤くしたみぞれが息を切らしていた。みぞれはいままでの感謝を優子に伝えようと、優子の背中を見つけ、駆け寄っていた。

鎧塚みぞれ

だって、助けてくれてた。ずっと

吉川優子

自分勝手に動いてただけやって

鎧塚みぞれ

そんなことない。私、ちゃんとお礼を言おうって思ってた。だから、走った

吉川優子

あぁ、それで

言葉が詰まる。胸がいっぱいになり、優子はとっさにうつむいた。両目が熱い。

鎧塚みぞれ

優子、どうしたの? 私、ダメなこと言った?

吉川優子

ちがう、全然。ダメじゃない。ただ、みぞれがそんなこと言ってくれるんがうれしくて

鎧塚みぞれ

ほんと?

吉川優子

うん、ほんと。こっちこそ、こっちこそ、いままでありがとう。みんなが辞めたときに、吹部に残ってくれてありがとう。オーボエを続けてくれてありがとう。一緒に頑張ってくれて、ほんまありがとう

鎧塚みぞれ

‥‥‥優子のほうが、ありがとうが上手

吉川優子

何それ

みぞれの口からそんな言葉を聞くとは思っていなかった優子の涙腺は崩壊してしまう。一緒に学校に向かっていた希美と夏紀は、みぞれと泣いている優子の姿を見つけ二人に合流する。優子はフライング泣きだと夏紀に笑われてしまう。南中カルテットでの最後の登校となった。

武田綾乃. 響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部のホントの話 (宝島社文庫) . 宝島社. Kindle 版.

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