悩みと抱えるトツ子ときみにそっと寄り添い、慰めの言葉をかける日吉子先生。

作品情報

作品映画「きみの色」
監督山田尚子
脚本吉田玲子
公開日2024年8月30日
主題歌Mr.Children「in the pocket」
制作会社サイエンスSARU

プロフィール


シスター 日吉子

Sister Hiyoko

・修道女
・虹光女子高校 教員
・担当教科:国語
・寮の監督官
・高校時代、ロックバンド「GOD almighty」結成
・声優:新垣結衣


トツ子

日吉子先生は、教師陣の中でも笑顔が少ない方。授業でも冗談を交えたりすることもない。

トツ子へ

トツ子はしろねこ堂でバンド活動ができる日々を感謝するため、聖堂で祈りを捧げていた。

そこに偶然日吉子先生も訪れ、2人は隣の席に座り会話を交わす。

日吉子

日暮さんは

トツ子

あ、はい

日吉子

夏休み中、ずっと寮に?

トツ子

あ、はい。ちょっとやりたいことがあって……

日吉子

そうですか

日吉子

それも一つの選択ですね

トツ子は正月以外の長期休みは実家に帰らず、寮で過ごしている。そのことを誰かに話すと、不思議がられ理由を問われたり、家族関係を詮索されることが多かった。

日吉子の「一つの選択」という言葉が身に沁みた。どうしたらこんな人になれるのだろう。心にわだかまりがなく、誰にでもまっすぐに向き合える人に。

日吉子先生はトツ子の事情に深入りせず、その意志を尊重した。トツ子は日吉子先生のようなシスターに憧れの念を抱く。

日吉子

やりたいこと、というのは?

トツ子

あの……曲を作っていて

日吉子

まあ、新しい聖歌を

トツ子

そ、そんなわけ……

トツ子

そんなすごいことはしてなくて、これは私の気持ちというか、幸せなことを歌った曲で……

日吉子

善きもの。美しきもの。真実なるものを歌う音楽ならば……

日吉子

……それは聖歌と言えるでしょう

トツ子

悲しかったり、苦しかったりする曲は、聖歌ですか?

日吉子

心の苦しみを歌うのも、聖歌だと私は思いますよ

日吉子

受け入れることです。きっとその歌が日暮さんを守ってくれるのではないでしょうか

きみへ

日吉子

反省文ですか

きみ

悲しかったり、苦しかったりする曲は、聖歌ですか?

日吉子

反省文、というのは少し堅苦しい言い方ですね

日吉子

なにかこう、もう少し、心が軽くなるような……

日吉子

心の内を歌にしてみるのはどうでしょう?

きみ

歌に……

日吉子

日暮さんとバンドを組んでいるのでしょう?

きみ

……はい……

日吉子先生は聖バレンタイン祭のポスターを掲示して貰うため、商店街のお店を回っていた。

しろねこ堂を訪れた日吉子は、そこアルバイトをしてた、虹光女子高校のかつての生徒である作永きみと出会う。

日吉子

ああ、いけない。そうでした

日吉子

このチラシをこの辺りのお店に置いてもらおうと、今日はうかがったのでした

日吉子

私ときたら、素敵な本に目を奪われてしまって……

きみ

聖バレンタイン祭……

日吉子

毎年のお祭りなので、作永さんも……

きみ

はい

日吉子

作永さん……

日吉子

日暮さんと一緒に出てみませんか?

きみ

(出てみる? トツ子と?)

あまりに予想外のことだったため、きみは最初、日吉子先生の言葉の意味が分からずにいた。

日吉子

卒業生も参加できるのですよ

きみ

私は卒業生では……

日吉子

あなたはこの学校を卒業したのです

日吉子

あなた自身のタイミングで

日吉子

それに作永さん、あなたを慕っていた生徒たちも、あなたが元気にしているところを見たいと思いますよ

きみは、聖歌隊の部長という役割を放棄して、学校から逃げたことを後ろめたく思っていた。

日吉子はきみが途中で学校を辞めたことを、"退学"ではなく、"卒業"だと言う。

日吉子

あなたは嘘をついた

日吉子

おばあさまを欺いて、寮に忍びこんだ。だけれども、そのすべては罪であって罪ではないのです

日吉子

あなたはただ思いやっただけです

きみが友達に黙って学校を辞めたことも、そのことを祖母に隠していたことも、決して相手を傷つけようとして行動したことではなかった。

むしろ傷つけないように気を遣い、嘘をつくことになった結果、きみ自身が傷ついてしまった。

その気持ちを理解してくれた日吉子先生の言葉を受け、先生や聖歌隊メンバーに見せる顔がないと常々思っていたきみだが、聖バレンタイン祭で演奏することを考えはじめる。

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