※ この記事は単行本の既刊12巻までのネタバレを含みます。
鬱マンガとして知られる『宝石の国』。その多数のトラウマ展開の中でも、特に心を撃ち砕かれるシーンを厳選しました。ランキング形式で3つ紹介します。
第三位:首を撃ち抜かれたアンタークチサイト
巻数 | 3巻 |
発売日 | 2014年8月22日 |
話数 | 第十九話 |
タイトル | 「新しい手」 |
ページ数 | p136 |
無くしたフォスの腕の代わりを緒の浜で探しているアンタークとフォス。金と白金を見つけ、腕に仮留めするも、それらは勝手に動き出し、フォスを包んで動けなくしてしまった。
そんなとき、不運にも曇っていた空が急に晴れ、月人が現れる。新型器と交戦し辛くも勝利するアンタークであったが、背後に現れていたもう一器の攻撃を首に受け、砕け散ってしまう。
動けない~~出してくれ~~。ちょっ‥‥‥!乱暴ね!もう少しやさしくして!
がまんしろ!こっちはヒビだらけでギリギリなんだ
あーでも、無事でなにより‥‥‥
先生が、さびしくないように、冬をたのむ
市川春子.宝石の国(3).(講談社)
フォスは金と白金に包まれているおかげで身体が隠れ、月人たちに見つかっていない。アンタークはフォスが声を出してバレないように、砕け落ちる寸前で指を口元に当てるしぐさをし、フォスに冬の仕事を託した。このシーンはアニメ「第八話アンタークチサイト」で映像化されている。
第二位:首を撃ち抜かれたフォスフォフィライト
巻数 | 6巻 |
発売日 | 2016年9月23日 |
話数 | 第四十四話 |
タイトル | 「近道」 |
ページ数 | p178 |
天候の都合により、冬眠を延期している宝石たちは当番制で冬の見回りを行うことになった。緒の浜を担当していたフォスとカンゴームは予兆の黒点を発見する。カンゴームは月人を踏み台にしてジャンプし剣を振り上げるも、左手のスモーキークオーツが接着しきっておらず、再び割れて落としてしまう。
カンゴームの左手を乗せて閉じようとする月人の船。フォスは取り戻そうと飛び上がり手を伸ばすも、上に移動した月人の矢で首を貫かれた。奇しくもアンタークと同じ撃ち抜かれ方となった。
バ、バカヤロ~~~~!ほんっと、なんで同じことをなんどもなんども!ほんっとそういうとこ、いやっ
市川春子.宝石の国(6).(講談社)
さきの二重の黒点との戦闘でも、一緒に戦っていたスフェンやペリドットたちの破片が奪われそうになったとき、真っ先に突っ込んでいったフォス。去年の冬、アンタークが目の前で月に連れ去られたことで、仲間を取られることがトラウマになっているのか、視野が狭くなってしまうところがある。
カンゴームはそんな行動に呆れ、必死に取り返そうとするも、フォスの頭部を器に乗せたまま、月人の船は月へ行ってしまった。前話、四十三話「盤上」の最終コマが、新型器との戦闘から回復したスフェンとペリドットに、フォスが喜びながら駆け寄り抱き付こうとするシーンで、これから物語が上向きに進んで行くのかと思いきや、今話での急転直下な展開。
旧型で、黒点も一つ、サイズも大きくないから油断があったのか、頭を失うという、今までの足や腕とは比にならない損失を負った。しかし、これが月人と先生の関係を探るフォスにとって、この話のタイトルでもある“近道”となった。
第一位:変わり果てたフォスフォフィライト
巻数 | 11巻 |
発売日 | 2020年7月20日 |
話数 | 第八十二話 |
タイトル | 「成り行き」 |
ページ数 | p66 |
フォスが金剛を起動させるも、地上の全宝石から攻撃を受け、祈らせることに失敗してから二百二十年後の冬。先生に修復され意識を戻したフォスは、すぐさま、祈らせようと試み再起動をさせる。
だが、あと一歩のところで異変に気付いたユークレースやボルツに見つかり、再び阻止されてしまう。ルチルに粉にされそうなる直前でパパラチアたちを乗せた船が地上に到着。間一髪で助けられ、月に戻ったフォス。
二百二十年間も破片にされたままで、ついには皆に忘れ去られ、さらに二度も祈りの邪魔をされたことで、地上に残っているかつての仲間たちに復讐心を抱く。
金剛はまだ僕を愛している。邪魔がなければ金剛は祈った、必ず祈った。必ず祈る、僕の為に。
次は、僕の邪魔をする、すべての宝石を粉にする。宝石さえいなければ
市川春子.宝石の国(11).(講談社)
足、腕、頭部と身体の一部を失っていき、元の姿からかけ離れていったが、ついに美しさのかけらもない禍々しい怪物と化した。博物誌編纂の仕事をしていた頃の純粋だったフォスの面影はなく、思わず目を伏せたくなる主人公の姿が一ページに大きく描かれているシーン。
修復途中だったため、破片同士の境界線が露わなったままで細かく砕かれた痕が生々しく残ってる。そして、主人公のものとは到底思えない衝撃的な発言。末っ子で可愛げがあって、可愛がられていた頃の、仲間想いで心優しかったフォスはどこへ…。
この台詞はYouTubeで公開されている「『宝石の国』12巻発売記念 新CM」で、アニメ版と同じ、黒沢ともよさんの声があてられている。