何もできなかったフォスフォフィライトが永い永い時をかけ、ようやくやり遂げた仕事。
市川春子.宝石の国(12).第九十八話:一万年ぶりに草原で目覚めたフォス
現在を保存し未来の不意に備える、重要かつ創造的で知的な仕事だ
話数 | 第一話 |
タイトル | 「フォスフォフィライト」 |
ページ数 | p29 |
宝石たちは一つか二つの役割を与えられているのだが、不器用なフォスは生まれてから299年経っても、得意なことを見つけられないでいた。
そんなフォスに先生は、フォスでも何とかできそうな博物誌編纂という仕事を与えた。
そこでおまえには博物誌を編んでもらう
えー!じみそう
何を言う。現在を保存し未来の不意に備える、重要かつ創造的で知的な仕事だ
でもおー
その正直さが必要な仕事だ
市川春子.宝石の国(1).第一話「フォスフォフィライト」
フォスは戦うことを希望しており不満を持っていたが、宝石たちにアドバイスを貰いながらこの仕事に取り掛かっていく。
それをもって、博物誌制作は中止とする
話数 | 第十一話 |
タイトル | 「新しい足」 |
ページ数 | p125 |
無断で海に入り、両足を失ったフォス。先生は学校に戻っていたフォスを見るやいなやきつく叱責する。
この大馬鹿者!
ごめんなさ い
海 怖かったです
報告は明日聞こう
明日からはもっと…
それをもって、博物誌制作は中止とする
市川春子.宝石の国(1).第十一話「新しい足」
そして、フォスがあちこち勝手に出歩かないように博物誌編纂という仕事も中止にした。だが、中止ということは、再開するときが来るということ。
話数 | 第九十八話 |
タイトル | 「祈り」 |
ページ数 | p186 |
あの日私は、この仕事の報せを受けるまで野原にひとりでした
第一話で草原で寝ているフォスをゴーシェが呼びかけ、目を覚ますシーンから始まったこの物語。一万年後、再びフォスは草原で目覚める。
私は今日、この野原で目を覚まし、思い出したのは昔のこと。あの日私は、この仕事の報せを受けるまで野原にひとりでした
そして今日もひとりです。つまりは、私は初めからずっとひとりだったのです
市川春子.宝石の国(12).第九十八話「祈り」
フォスは皆を祈るために、一万年間も地上で孤独に耐えたわけではなく、元々ひとりだったのだから気にすることはないと伝えた。
昔々、宇宙は無垢で満たされていました……
話数 | 第百三話 |
タイトル | 「無垢」 |
ページ数 | p* |
金剛の記憶の中で知った過去を、兄機と新たな石生命体たちに伝えようとするフォス。兄機は無垢な石たちに、人間という醜い存在を教えることでの影響を危惧する。
博士のお話をあなたと彼らに聴いてほしいのです
僕は聴きてえけどよ、あいつらが人間に興味を持ったらよ、おまえ困るだろ
はい。しかし、最悪の種の中にあっても、脆く僅かながら美や善を果たそうとした者達が存在したことは 事実です
昔々、宇宙は無垢で満たされていました……
市川春子.宝石の国(13).第百三話「無垢」
それでもフォスは、無機体たちに正直に歴史を話すことにした。
伝えること。それは、新しい世界への橋渡しをすることかもしれない。
やり遂げた。何もできなかったこの僕が
話数 | 第百七話 |
タイトル | 「終わりに」 |
ページ数 | p159 |
太陽系の最期のとき、星に残ったフォスはあの頃を思い出す。
やり遂げた、何もできなかった この僕が。先生 ほめてくれるかな
みんなに会いたいような、軽い気分、かるい
市川春子.宝石の国(13).第百七話「終わりに」
星が太陽に飲み込まれ、フォスと人間の部分は消滅した。