「十 真昼のイルミネーション」より、クリスマスイブに偶然出会った中川夏紀と傘木希美の会話。2冊目の短編集に収録された傘木希美視点の話。

巻数10巻目
発売日2018年4月5日
作者武田綾乃
出版社レーベル宝島社・宝島社文庫

収録内容

  • 一  飛び立つ君の背を見上げる(Fine)
  • 二 勉学は学生の義務ですから
  • 三 だけど、あのとき
  • 四 そして、そのとき
  • 五 上質な休日の過ごし方
  • 六 友達の友達は他人
  • 七 未来を見つめて
  • 八 郷愁の夢
  • 九 ツインテール推進計画
  • 十 真昼のイルミネーション
  • 十一 木綿のハンカチ
  • 十二 アンサンブルコンテスト
  • 十三 飛び立つ君の背を見上げる(D.C.)

相手に光ってもらわんと価値がわからんようなやつが何言うとんねん

12月24日のお昼。高校三年生の希美は家族と食べるケーキを受け取りに四条を訪れていた。

そこで偶然、同級生の夏紀と出会いカフェに誘われる。夏紀はデパート前の植え込みに巻きつけられているコードを見て違和感を感じる。

中川夏紀

昼間の電飾って、なんか変な感じせん?

傘木希美

うちはイルミネーション、好きやけどね

中川夏紀

でもさ、なんかイラッとせん?昼間は存在すら気づかんようなやつらがさ、夜になってピカピカ光ってるところ見て、『きゃあ素敵』とか言ってるわけやん。

中川夏紀

いやいや、相手に光ってもらわんと価値がわからんようなやつが何言うとんねんって感じちゃう?

傘木希美

ひねくれすぎでしょ?

中川夏紀

うちはさ、光っとらんくてもええなって気づける人間って、めっちゃすごいなぁて思うわけよ。優子とか、そういうの得意やわ

輝いてるものだけを見て称賛しているような人は表面的な価値しか分かっていないと憤慨気味の夏紀。

部長としての優子は、目立ってないところで支えたり、影で努力しているような人のすごさに気づける一面があることを、その働きを近くで見てきた夏紀は知っていた。

誰かの好きを踏みにじっても気づかんような大人にさ

後輩の奏がオススメしていたお店を見つけ、二人は小麦粉を薄く焼いて、ガレットと呼ばれる丸いパンケーキに目をつける。

希美はクルミとバニラアイス味(キャラメルソース入り)、夏紀はベーコンと卵が乗ったものを注文した。

話題は夏紀が見た映画の話になり、夏紀は好きなロックバンドが手掛けた映画主題歌が、今までの作風から路線変更したポップな曲になってしまったことを嘆く。

中川夏紀

ピカピカってして綺麗やから、周りに人が寄ってくる。それを見た大人がね、もっと光らせて人を集めたろって思うわけよ

傘木希美

まあ、思うかもしれんね

中川夏紀

もともとの価値がわかってる人はええねん。でも、人がいっぱい集まるとそうじゃない人も出てくる。

中川夏紀

光が足りんのやったら違う電飾も足せ、とか、時間あけて使わなあかんらしいけど多分イケるやろ、みたい。

中川夏紀

で、そういうトンチンカンなこと言うやつに限って、電飾が壊れて光らんくなったら『なんで壊れたんかなあ』って馬鹿みたいな顔で言ってるの

傘木希美

たとえに熱が入りすぎてて怖いんやけど。怒ってるん?

中川夏紀

怒ってるとかじゃなくて、ただ単純に心配なだけ。自分の大事なもんが、価値を知らん誰かに壊されるんちゃうかって

中川夏紀

でももっと不安なんは、自分ももしかしたらそういう大人になるかもしれへんっていう可能性なんかもしれんわ。誰かの好きを踏みにじっても気づかんような大人にさ

有名になるにつれて、自分の言葉に責任も持たないくせに強引な主張や理不尽な意見を言う大人が集まってくる。夏紀は好きだったバンドの現状をイルミネーションに例えて話した。

『飛び立つ君の背を見上げる』文庫版に追加収録された「記憶のイルミネーション」で希美はクリスマスイブの夏紀との会話について言及しているのでそちらもぜひ。

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