夏休みのパート練習中。梓とあみかの依存関係が原因でトロンボーンパート内に亀裂が生じてしまう。
タイトル | 立華高校マーチングバンドへようこそ |
巻数 | 5巻目 |
発売日 | 2016年8月4日 |
作者 | 武田綾乃 |
出版社・レーベル | 宝島社・宝島社文庫 |
収録内容
- プロローグ
- 一 暴走フォワードマーチ
- 二 追憶トゥーザリア
- 三 緊張スライドステップ
- エピローグ
合宿を終えた立華高校吹奏楽部はコンクールに向けて、日々練習に励んでいた。夏休み期間中ということもあり、朝6時から夜10時までというハードスケジュール。
この日は合奏練習ではなくパート練習が割り当てられ、1年生だけで教室で練習をすることになった。初心者の名瀬あみかは経験者である佐々木梓にいつもようにアドバイスを求める。
梓ちゃん、教えてほしいとこがあるんだけど
ん?どこ? あー、確かに難しいなあ。ちょっと待って、一緒に確認しよう
梓はあみかの苦手なところを確かめてから、そこを克服するための練習方法を的確に教えた。
それがばっちりできるようになったら、楽譜のところでやってみたらええよ。
わかった、梓ちゃんありがとう!
するとそこに、同じトロンボーンパートの1年生である的場太一と戸川志保の2人が歩み寄ってきた。
何?どうしたん?
いやな、前からの言わなあかんと思ってたんやけどさ
名瀬さ、いい加減に佐々木に頼んの、やめたほうがええと思う。
なんで? うち、全然迷惑に思ってへんで?
太一から予想外の言葉を受け、動揺する梓とあみあ、梓は慌てて反論した。
太一と志保は以前からあみかが梓に依存しすぎている状況を快く思っておらず、意を決して直接伝えることにしたのだった。
佐々木さあ、いつまで名瀬のこと初心者扱いしてんの?もう七月やぞ。お前はAのファーストやねんから、ちゃんとコンクールで結果出すよう頑張るのが義務やと思う。
うちが頑張ってへんっていうわけ?
入部して間もない頃は初心者に手取り足取り教えてあげるのは悪いことではない。けれど、あみかが入部してからすでに3ヶ月。
いつまでも変わらない二人の関係性に不安を覚えていた二人は同じパートと同級生として、あみかが自立することを求めていた。
お前はAのメンバーなんや。名瀬に教えるのは俺だってできる。お前は名瀬に時間を割く暇があったら、自分の練習すべきやろ
だから、やってるやんか。うちはちゃんと自分のやるべきことやってからあみかに教えてる。文句言われる筋合いなんかない!
上級生を差し置いてAメンバーに選ばれた梓は、あみかの練習に付き合うよりも、コンクールに向けて練習に専念するべきだと主張する太一。
梓は、誰よりも努力し、自分の練習メニューをこなして上で、あみかに時間を割いているので何も問題はないと強く反論した。
私、梓ちゃんの迷惑かな?
あみか、ほんまに気にせんでいいからね。うちならいつだって、あみかのために協力してあげるから
・・・・・・うん、わかった。梓ちゃん
あかんわ
二人のやり取りを聞いた志保はため息を漏らす。太一の説得も虚しく、二人の依存関係が変化することはなかった。
おわりに
コンクールで良い結果を残すため、梓があみかに時間を割くのは辞めるべきだと言う太一と志保。それに対して、ただ純粋にあみかの上達を願って練習に付き合う梓。正しいのは果たしてどちらなのでしょう。