あみかの靴紐がほどけていると代わりに結んであげていた梓だったが、8月の合宿で志保から言われた言葉を境にして関わり方が変わっていく。

立華高校 マーチングバンドへようこそ 前編

二 追憶トゥーザリア

巻数5巻目
発売日2016年8月4日
作者武田綾乃
出版社レーベル宝島社・宝島社文庫

収録内容

  • プロローグ
  • 一 暴走フォワードマーチ
  • 二 追憶トゥーザリア
  • 三 緊張スライドステップ
  • エピローグ

五月、昇降口近くの吹き抜けの小ホールでパート練習をしている佐々木梓、名瀬あみか、的場太一、戸川志保のトロンボーンパートの一年生。

4人は未来先輩の課題に合格するため放課後練習が終わったあとに居残り、ステップ練習をしていた。その休憩中の出来事。

佐々木梓

あ、ねえ、ちょっと

ペットボトルを置こうとしたそのとき、あみかのスニーカーの靴紐がほどけているのが視界に入った。

声をかけてみたが、あみかはガードの演技に集中しているのか、一切の反応を示さない。仕方がないので、梓はそっとその足元に手を伸ばすと、蝶々結びしてやった。

小ホールでは同じく一年生の花音と美音の西条姉妹が、地元の中学生と一緒に演奏するハッピーコンサート(通称ハピコン)に向けて、カラーガードの練習をしていた。

高校から吹奏楽を始めたあみかにとって、ガードの演技は物珍しく見入ってしまっており、梓の声が聞こえていなかった。

名瀬あみか

わ、気づかなかった。梓ちゃんありがと

佐々木梓

もう、あみかも子供やないねんから、ちゃんと自分で気づかんとあかんで

名瀬あみか

ゴメン、ゴメン

ありがとね、とあみかが梓の手を握り締める。彼女の手を握り締める。彼女の手は小さくてとても女の子らしい。梓は少しのあいだ、その柔らかくて気持ちのいいふにふにとした感触の余韻に浸っていた。

立華高校 マーチングバンドへようこそ 後編

一 妄想マークタイム

巻数6巻目
発売日2016年9月6日
作者武田綾乃
出版社レーベル宝島社・宝島社文庫

収録内容

  • プロローグ
  • 一 妄想マークタイム
  • 二 瞬間パレードレスト
  • 三 無意識テンハット
  • 四 青春ベルアップ
  • エピローグ

お盆休みを控える八月。あみかが桃花先輩との厳しいマンツーマントレーニングで涙を流し、梓が志保からビンタされるという、いろいろあった合宿二日目の夕食時の出来事。

視線を落とすと、あみかのスニーカーの紐がほどけているのが見えた。いつものようにそこに手を伸ばそうとし、梓ははたと我に返った。

佐々木梓

あみか、靴紐ほどけてる

梓は志保に過保護だと言われ、あみかとはしばらく距離を置くことにしたことを思い出した。

"いつものように"とあるのでこれまでに何度も梓が代わりに結んであげていたことがわかる。何かと靴紐がほどけがちな名瀬あみか。

そう指摘すると、あみかはこぼれおちんばかりにその目を見開いた。あみかは一度目を伏せると、柔らかな微笑を唇に乗せた。

名瀬あみか

ありがとう、梓ちゃん

普段なら代わりに結んでくれていたのに、今回は指摘するに留めた梓の行動の変化に、おそらくあみかも気が付いただろう。

そう言って、彼女はその小さな手で自分の靴紐を固く結んだ。梓が彼女の靴紐を結んでやることは、もう二度とないのだろう。漠然と浮かんだ確信が、梓の胸に引っかき傷を残していった。

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名瀬あみかが涙を浮かべて梓に打ち明けた自身の暗い過去とは?|立華高校マーチングバンド

深夜23時過ぎ。練習終わりの二人は宇治川沿いのベンチに並んで座る。あみかは隠し続けてきた中学時代の暗い過去を梓に語った。

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